〈天下騒乱とは?〉

大坂夏の陣が終った翌年(1616)、突然、戦国の覇者・徳川家康が急逝します。徳川幕府の骨格定まらず戦乱の余燼が燻り続ける頃です。家康の死は、天下統一を無に帰し、再び戦国の世に戻そうとするのか…、物語はここから始まります。
家康の死を機に、騒乱を煽り立て、あわよくば天下を取ろうとする勢力に抗して、これを未然に防ごうとする三人の侍が、この物語の主役です。
まず、家康・秀忠・家光に仕えた幕閣の長老、土井利勝です。
実は、家康の隠し子なのですが、生涯、実の父を明らかにすることなく、将軍の側近として葵三代に使えます。家康はその遺言で、『将軍の座は弟・秀忠に譲るが、幕府は全て利勝に委ねる』と伝えました。また、天下安寧のためには、時に善悪を超え策謀を凝らし悪を為すこともあると、その帝王学を、臨終の真際に利勝に伝えます。利勝は、まさに天下騒乱を期する勢力を未然に潰すべく、策を巡らせ続けるのです。平和のために、あえて非情に「悪」を為す、その土井利勝を、当代一の演技派で人情味豊かな西田敏行が演じます。
利勝の腹心で、将軍家指南役の柳生但馬守宗矩。その息子で、幼くして父を凌駕していたという剣の天才・柳生十兵衛が次の主役です。父からの密命を受ける十兵衛は、天下騒乱を防ぐためにと、日本全国へ飛びます。様々な出会いの中で十兵衛は成長しますが、彼が本当に目指す道は、剣の道です。 
しかし、ひとりの武芸者として求める剣の道と、父・宗矩や利勝が十兵衛に求める侍の道が大きく異なることを、彼は知ることになるのです…。この柳生十兵衛を演じるのが、中村獅童です。時代劇の演技・人気・実力を兼ね備えた中村獅童が、全く新しい柳生十兵衛を登場させることでしょう。
もうひとりの主役が、鍵屋ノ辻の仇討で知られる、剣豪・荒木又右衛門です。
又右衛門の仇討は、もともと幕閣のやりように不満を溜めてきた外様大名と旗本八万旗の争いを過熱させ、再び天下騒乱を引き起こすかもしれない重大事件でした。又右衛門は、この仇討の意味をこう語ります。『この企て、仇討にあらず、上意にあらず、天下の争乱を治めるための御年寄御内意である』と。鍵屋ノ辻の決闘は、壮絶を極め、まさに、幕閣、旗本、外様大名の思惑を超え、討つ者討たれる者が武士の「義」のために命を白刃に晒すのです。そして又右衛門は、本懐を成し遂げた後、愛する家族を残しながら、仇討の連鎖をとめるために自刃していくのです。この荒木又右衛門を、時代劇スターとして益々その安定感と実力を評価される村上弘明が演じます。

この三人が、戦国の乱世に終止符を打ち、天下騒乱を未然に防ぐために、三者三様異なる立場で、各々が武士の道を進んでいくのです。

〈天下騒乱の陰に生きる女性たち〉

物語の展開の大きな柱は、将軍跡目相続問題で対立する、春日の局とお江与の方です。
三代将軍家光の乳母・春日の局は、病弱な家光を助け、幕政の安定を図ろうとします。利勝と共に、時に「悪」の策謀も図り、身体を張って家光を守ろうとするのです。戦国の世を生き抜いた華麗な女傑・春日の局を、片平なぎさが演じます。
家光の生母で、家光の弟・忠長を溺愛するお江与の方は、再び天下騒乱を起こさせ、あわよくば家光を廃し、将軍の座を忠長へ奪わんと画策します。当初、本多正純と組み、後に怪僧・天海と組みひたすら忠長のために天下騒乱の芽を育てんと暗躍するのです。この猛々しくも哀しい母を、かたせ梨乃が演じます。
天下騒乱の火種となった、この二人の女性の激しい対立が、全編を通して描かれます。
さらに、哀しくも魅力的な女性たちが多く登場します。
荒木又右衛門の妻・みねは、実弟の仇を取りたいという姉の業と、愛する夫に助っ人を託する辛さと、幼き子供と家を守る妻の想いとの狭間で苦しむのです。仇討が成就した後、家族の幸せな再会を目前にして、又右衛門は切腹してしまいます。十兵衛にも慕われた、この美しくも哀しい女性・みねを田中美里が演じます。
女忍者・白狐は、宗矩の命を受け、十兵衛の影となり、謎の動きをします。十兵衛への密やかな恋心を秘めて妖しくも激しいアクションで活躍する、白狐を、佐藤江梨子が演じます。
他にも、家光の妹で、朝廷との政略結婚のために犠牲となった和子(まさこ)。天皇家に入内し、後に東福門院となります。仇・河合又五郎の恋人で、又五郎を追って吉原の女郎になっていく悲劇の女性・若狭。又五郎の助っ人で槍の名人・桜井半兵衛の妻・八重。彼女は、夫・半兵衛に心配をかけまいと覚悟の自殺を遂げているのです。そして、又五郎の助っ人の河合甚左衛門を慕う下女・さや。等々、多くの女性たちがドラマを彩ります。

〈活劇チャンバラの面白さを満載した本格時代劇〉

鍵屋ノ辻の壮絶にしてリアルな決闘を頂点に、チャンバラの楽しさを存分に描きます。十兵衛、又右衛門の直接対決も企てて、新しくユニークな殺陣を盛り込み、チャンバラ活劇を堪能してもらいます。

脚本は、大ベテランの長坂秀佳。「新春ワイド時代劇」の執筆も、今回で5回目となり、この番組の最多登板ライターです。時代劇のツボを十二分に知り尽くした長坂秀佳と組む監督は、40代前半の若手監督二人です。前半の5時間を「釣りバカ日誌11,12,13」の本木克英監督。後半の5時間を「大奥」の山下智彦監督が担当します。それぞれの豊富な経験を踏まえて、若さを生かした斬新な視点で、スピード感溢れる殺陣やストーリー展開を演出していきます。
ドラマは、三代将軍の跡目相続問題を中心に、「宇都宮の釣り天井事件」や「福島正則改易」など、ご存知の事件を織り交ぜながら、徳川家康、徳川秀忠、徳川家光、柳生宗矩、伊達政宗、大久保彦左衛門、等々お馴染みの歴史上の人物が次々と登場していきます。これらを演じるのは、山崎努、柄本明、平山広行、林隆三、石橋蓮司、榎木孝明などなど、実力派名優から、個性あふれる若手俳優まで豪華なスターが勢揃いしています。

あえて「悪」を企むも、真に「平和」を求めた土井利勝。父や政治に反発しつつ、ひたすら「剣」に生きた柳生十兵衛。小さな家庭の幸せを守りたくも「義」に殉じた荒木又右衛門。彼らの死闘が、戦国乱世に終止符を打ち、徳川幕府二百六十五年の安寧を招いたのでしょうか…。
「家」を守り、「忠」に従い、「義」を尊び、「律」を重んじ、武士としての意地を通し、剣に生き、サムライとしての己が矜持を大切にした男たちの戦い、そして母として妻として熱く生きる女たちを、感動的に描いていきます。

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