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2017年5月12日(金)「ネポティズム」にも注目を 木村恭子

 「フランスのケネディ」とも称されるフランスの新大統領に選出されたマクロン氏は、高校時代の恩師で20歳以上の年の差のある妻、ブリジットさんとの関係も何かと話題です。


 ブリジットさんは銀行員の夫と3人の子どもがいた身でしたが離婚し、2007年にマクロン氏と結婚。マクロン氏の選挙では元国語の教師だけあってか、スピーチにチェックをいれるなどの内助の功を発揮したそうです。


 また、ブリジットさんの前夫との娘でマクロン氏がブリジットさんと出会った高校の同級生のローランスさんはマクロン氏の熱烈な支持者として知られ、その妹で弁護士のティファニーさんは、マクロン氏の選挙運動本部のメンバーとなり、プレス対応も行っていたとのこと。


 もはや夫婦二人三脚を超えて、義理の娘たちも巻き込んだ「家族ぐるみ」の選挙戦を展開したマクロン氏ですが、一方で、大統領に就任した後には、ファーストレディとなったブリジットさんが政権内で大きな力を持つのではないかと指摘するメディアもあります。


 日本でも、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地の格安売却問題に関し、安倍晋三首相の昭恵夫人をめぐり、首相夫人の立場(公人か私人か)が国会で取り沙汰されましたが、「ファーストレディ」の名称の発祥の地とされる米国では、1967年に制定された「反縁故法」により、大統領の家族が政府の要職に就くことは禁止されています。


 ケネディ大統領が実弟を司法長官に任命した人事への批判から作られた法律で、制定以降は、大統領の親族が政権入りした例はありません。しかしトランプ大統領になったいま、家族の政権への関与のあり方が問題視されつつあります。


 その最たる例が、トランプ大統領の長女、イバンカさんです。イバンカさんは4月25日にドイツの首都ベルリンで開かれた世界の女性政治家や実業家らが集まるウーマン20(W20)サミットに出席し、「ファーストドーター」として国際デビューを果たしました。


 メルケル独首相が直接招待したそうですが、複数のメディアによりますと、ドイツのガブリエル外相は「政治を家族やビジネスと混同することは縁故主義を連想させる」などとイバンカさんの補佐官就任を批判。「選挙で選ばれていない家族が国の代表のように現れて、まるで王室の一員であるかのように扱われることには違和感を覚える」と述べたと伝えられています。


 この「縁故主義」は英語で「ネポティズム」(nepotism)といい、前出の米国の反縁故法は"anti-nepotism law"。イバンカさんの夫で大統領上級顧問に就いているクシュナーさんの政権内での立場が強まっていることも含め、最近の欧米のメディアでは "The creeping influence of nepotism in Trump's America"(4月26日の英紙フィナンシャル・タイムズ電子版)など、よく見かける単語です。


 「ネポティズム」の語源について、保守派の論客と知られた英語学者の渡部昇一上智大学名誉教授(4月に他界)が著書『皇室はなぜ尊いのか』に記したところでは、あるローマ法王が愛人の間にもうけた子どもを「甥だ」と言いつくろい、その子どもを出世させたことがあるそうです。ラテン語で「甥(おい)」を表す「ネポス」から発して、「身内びいき」という意味の「ネポティズム」が生まれたとのこと。


 もちろん「身内であっても余人を持って代えがたい優秀な人材であれば構わないのではないか」との考えもあるかと思います。ただ「ネポティズム」に対しては、政権の中枢のポジションに親族が就くことで、国益と個人的な利益が相反する利益相反への懸念など、結果的に政治を劣化させ、堕落させる結果になるとの弊害が指摘されています。


 トランプ政権でのイバンカさんやクシュナーさんの登用は、ビジネスから退き無給ならば反縁故法をクリアできると判断してのことですが、皆さんはこれに対し、どのようにお考えになりますか。世界的に「ナショナリズム」の台頭が注目されているなか、「ネポティズム」からも目が離せません。


日本経済新聞
編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター
木村恭子


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