BSジャパン

番組表

  • 経済・ニュース
  • 紀行・教養
  • 情報・バラエティ
  • 映画・ドラマ
  • スポーツ
  • アニメ
  • イチオシ番組
  • 再放送のお知らせ
  • イベント
  • ショッピング
  • 動画
  • 読む!
  • SNS一覧
  • お問い合わせ

2017年3月17日(金)ヤマト「適正価格」へ27年ぶりの値上げ 山川龍雄

 人手不足やネット通販による荷物の増加を受け、宅配便が危機に直面しています。最大手のヤマト運輸は、9月末までに宅配便の基本運賃を引き上げる方針を固めました。私がこのニュースで気になったのは、基本運賃の全面値上げは、消費増税時を除けば、実に27年ぶりのことだという点です。


 「クロネコヤマトの宅急便」は、ヤマト中興の祖である故・小倉昌男氏が約40年前の1976年に生み出しました。その後も、「クール宅急便」「ゴルフ宅急便」「スキー宅急便」「時間帯お届けサービス」など、新商品の拡充に取り組み、今では日本人の生活に不可欠な存在となっています。宅配便市場におけるシェアはおよそ5割。そんなヤマトが27年間も全面的な値上げをしてこなかったという事実に、改めて驚かされました。あえて、エールを込めて言えば、ヤマトはもっと自らが提供してきた価値にプライドを持った方がいいと思います。


 日本企業はとかく「値付け」が不得手と言われます。自らが提供する商品やサービスの価値を顕在化させ、適正価格で販売する意識が乏しい。その結果、欧米企業に比べて、低い利益率に甘んじているケースが多いのです。


 とりわけ物流業界はその傾向が強いように感じます。もちろん、同業他社との競争上、値上げできなかったという事情はあるでしょう。しかし、それを差し引いても、荷主企業や消費者に対して「適正価格を求める」という覚悟が不足していたのではないでしょうか。


 私は戦後、日本企業が生み出した3大イノベーションは、トヨタ自動車のジャストインタイム生産方式、セブンイレブンのコンビニエンスストア、ヤマト運輸の宅配便だと思っています。この3つはいずれも物流が土台を支えています。在庫管理が緻密で、納期が正確で、痒いところに手が届く日本流の物流が存在しなければ、実現できないビジネスモデルなのです。


 消費者から見れば、「物流はタダ」のように思われがちですが、日本の物流業界はもっとプライドを持っていいはずです。そうでなければ、日夜、現場で奮闘している従業員の方々の努力が報われないし、先々、人材がもっと集まらなくなるでしょう。


 宅配便の生みの親である小倉氏は「サービスが先、利益は後」という方針を掲げてきました。恐らくヤマトが長らく全面的な値上げに踏み切らなかったのは、現役世代が、そんな「小倉イズム」を意識してきたことも一因でしょう。


 しかし、ヤマトにはもう1つ、忘れてはならない小倉イズムが存在します。「労使一体経営」です。新サービスを導入する際、ヤマトでは労組の幹部が、構想段階から打ち合わせに参加することを原則としています。彼らがセールスドライバーの労働条件が悪化しないかチェックし、納得するまで議論したうえで、新サービスを導入します。小倉氏は生前、私がインタビューした際にも、「労使一体経営こそ、我が社の強み」と繰り返していました。


 昨今の人手不足の状況を踏まえれば、もはや労使が納得づくで、現在のサービス水準を維持するのは難しくなったと言えます。小倉さんがご存命でも、サービスの見直しと値上げに踏み切ったと思います。いや、もっと早く決断していたかもしれません。


日経プラス10キャスター
山川龍雄


記事は日経プラス10クラブ会員向けのメールマガジンで毎週金曜日に配信しています
詳しくはこちら⇒http://www.bs-j.co.jp/plus10/club/

次へ 前へ コラム一覧へ